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毎月社内で回覧される『日経アーキテクチュア』という建築専門雑誌があります。
その中で、興味深い記事が掲載されていたので少し難しいかもしれませんが、できるだけ分かりやすくご紹介致します。<(_ _)>
日本建築学会の調査によると、熊本地震では、2000年以降に建築された木造住宅の被害は小さいと結論付けられたとのことです。
しかし、比較的新しい住宅でも倒壊した例があると、事例が挙げられています。『日経アーキテクチュア2021/5/27号』
(画像はインターネットから)
木造住宅は明確な建築のマニュアルが無く(フラット35の仕様書などある程度の指針はあります。)、各社オリジナルの技術で施工しています。
したがって、住宅の耐震についても考え方は各社オリジナルでそれぞれ異なっており、耐震についての法律や基準が複数存在しています。
今回の記事では、求められる耐震性能について試算を行ったところ驚く事実が分かりました。。。
まずはおさらいです!!!
以前、コラム①で「耐震等級」についての記事を上げましたが、
【コラム①「耐震等級」耐震について | 株式会社SHOEI|一級建築士事務所 (shoei-design.jp)】
よく聞く耐震等級とは、「住宅性能表示制度」や「長期優良住宅」という制度の中で耐震等級が定められており、1~3の範囲で設定されているものを言います。
耐震等級1→震度6~7程度の地震に対して倒壊しない、かつ震度5程度の地震に対して損傷しないレベル。〔建築基準法レベル、新耐震基準(1981年以降の基準)〕
耐震等級2→耐震等級1の1.25倍の地震に耐えられるレベル。
耐震等級3→耐震等級1の1.5倍の地震に耐えられるレベル。消防署、警察署など公的な建物は実質3以上のレベルで建てられています。
耐震についての基準は主に3つあります。
①建築基準法の水準に従う方法。いわゆる、基準法の仕様規定の「壁量計算」「4分割法」「N値計算」等を行う方法。(耐震等級1レベル)
②『住宅性能表示制度』や『長期優良住宅』の認定を取得する方法。(耐震等級を取得する。)
③専門の構造設計士に依頼して、構造計算(許容応力度計算)を行って詳細に検討する方法。(昔、姉〇建築士という構造設計士がビルの構造計算を偽装して大問題になりました。)
求められるレベルは①→③になるほど、高くなり、検討も詳細に行われます。その分費用も掛かり、詳細なデータに基づいて建築されるため、建築コストも上がります!
よく驚かれるのですが、実は①の方法は専門の建築士でなくとも少しコツがわかれば誰でもできてしまいます。
インターネットにもエクセルでの計算表が上がっており、少し勉強すればできてしまうのです。
さらには、いわゆる4号特例という制度で、2階立て木造住宅については、確認申請時(法に適合しているかのチェック)に構造計算は不要、また計算結果の提出が求められていないため、本当にその住宅が安全かどうか誰にも分からないのです!!!
(4号特例)→https://xtech.nikkei.com/kn/atcl/knpcolumn/14/505663/053100012/
そして、一般的には多くの建築業者様が①の方法を取っている業者様が多いようです。
おかしいと思う方は多いと思いますが、4号特例については以前から廃止の声が上がっていますが、建築業界の闇で手付かずのまま今に至っています。
というのも、建築業界は経済波及効果が高いため、4号特例を廃止すると確認申請時に手間が増えて着工数が減少する、一部の計算を行わない人たちの為に廃止するのはおかしい等の意見、様々な事情があるようです。。。。
前置きが長くなりなしたが、今回の日経アーキテクチュアによると、①と②のレベルで求められる壁量(木造住宅は壁の量が大切です。)を試算したところ、
①のレベルと②の方法で耐震等級1(=基準法レベル)を取得するのでは、①は②に比べると求められる壁量が3/4程度しかないということが判明したそうです。!!
つまり、①の方法で検討すると、実質的には基準法が求めている水準に達していないということになります。(法律で求められる基準の数値が甘い)
熊本地震の例から建築基準法が改正されるとは言われていますが、現実味を帯びてきそうです。
弊社では、もともと③の構造計算を行っているため、①、②の方法よりも遥かに厳しい値で住宅を検証しています。
その分、コストはかかりますが、安全がお金で買えると思えば安心するのではないでしょうか。
一般住宅では構造計算を行っている業者はまだ少ないですが、熊本地震を機にいろいろと見直されていくと思われます。
スクラップ&ビルド型の社会から、サスティナブルな循環型の社会に適応していくため、弊社でも皆様に長く安心に住んでいただける建築を提供していきたいと思います。
建築や建物の性能に関しては日々学習していきます!!
By K.Ohara