
冬の山梨には、独特の美しさがあります。
澄み渡る青空、雪化粧をした山々、そして冬の低い太陽がつくる柔らかな光。
晴れた日の昼間には、日なたで思わず上着を脱ぎたくなるような暖かさを感じることもあります。
ところが、日が沈むと空気は一変。
朝晩の冷え込みは厳しく、家の中にいても寒さを感じることがあります。
日差しは豊かなのに、冬は寒い。
この一見矛盾するような山梨の気候には、どのような特徴があるのでしょうか。
今回は、山梨の冬の気候を紐解きながら、寒さと上手につき合う住まいのあり方を考えてみます。
山梨県は、周囲を山々に囲まれた内陸の地域です。
甲府盆地では、冬になると晴天が続く日も多く、日中は日差しによって暖かさを感じられます。
しかし、夜になると地表の熱が空へ逃げる「放射冷却」が起こり、気温が大きく下がることがあります。
特に雲が少なく風の弱い夜は、放射冷却によって冷え込みが強まります。
また、同じ山梨県内でも、甲府盆地と八ヶ岳南麓では気候が異なります。
標高が高い八ヶ岳周辺では、甲府盆地より気温が低く、冬の寒さは一段と厳しくなります。
つまり、山梨で快適に暮らすためには、県内でも地域ごとに異なる気候を知ることが大切なのです。

冬の晴れた日、窓辺に座るとぽかぽかと暖かく感じることがあります。
これは、窓から差し込む太陽の光が、床や家具、私たちの体を暖めているためです。
ところが、夕方になって日が沈むと、室内は次第に冷えていきます。
日中に取り込んだ熱が、窓や壁、屋根などを通して屋外へ逃げていくからです。
家の暖かさを考えるとき、大切なのは二つのこと。
一つは、太陽や暖房などから熱を取り入れること。
もう一つは、取り入れた熱をできるだけ逃がさないことです。
どれだけ日当たりがよくても、熱が逃げやすい家では、暖かさを保つことが難しくなります。
そこで重要になるのが、断熱と気密です。
断熱は、壁や屋根、窓などを通して熱が移動するのを抑えること。気密は、建物の隙間から空気が出入りするのを抑えることです。
この二つは、冬の暖かさを保つための基本となります。

山梨の冬の特徴である、豊かな日差し。
この自然の恵みを、住まいの暖かさに活かすことはできないのでしょうか。
例えば、建物の南側に窓を設け、冬の低い太陽の光を室内に取り込む方法があります。
一方、夏は太陽の位置が高くなるため、軒や庇を設けることで、強い日差しが室内に入り込むのを抑えることができます。
同じ窓でも、方角や大きさ、軒の深さによって、室内に入る日差しは大きく変わります。
こうした太陽や風などの自然の力を、建物の設計によって活かす考え方を「パッシブデザイン」と呼びます。
ただし、南側に大きな窓を設ければ、必ず快適になるわけではありません。
周囲の建物や山の影、敷地の向き、窓の断熱性能なども関係します。
その土地の環境をよく観察し、自然の力をどのように取り入れるか。
家づくりには、そんな視点も欠かせません。


冬の太陽を住まいに活かす方法は、窓から光を取り込むことだけではありません。
晴れた日に屋根に触れると、外の空気が冷たくても、日差しを受けた屋根面が暖かくなっていることがあります。
この屋根に届く太陽の熱を、暖房に利用する仕組みもあります。
その一つが、空気集熱式ソーラーシステム「そよ風」です。

「そよ風」は、太陽の熱で屋根の空気を暖め、その空気をファンで床下へ送る仕組みです。
床下のコンクリートなどに熱を蓄えながら、室内の暖かさに役立てます。
太陽光発電が光を電気に変えるのに対して、「そよ風」は太陽の熱を直接利用するという違いがあります。
もちろん、太陽から得られる熱は天候や季節によって変化するため、寒い日にはエアコンなどの補助暖房も必要です。
それでも、屋根に降り注ぐ太陽のエネルギーを、住まいの暖かさに利用するという考え方は、興味深いものではないでしょうか。


冬の寒さは、山梨で暮らすうえで避けて通れないものです。
けれども、冬の青空や豊かな日差しもまた、この土地ならではの魅力です。
寒さをただ防ぐだけではなく、自然の恵みを住まいに取り入れること。
断熱や気密によって暖かさを保ち、太陽の光や熱を上手に活かすこと。
そうした工夫の積み重ねが、冬の暮らしをより心地よいものにしてくれます。
窓辺に差し込む冬の日差しを感じながら、本を読む。
家族が思い思いの場所で、穏やかな時間を過ごす。
山梨の自然を知ることは、この土地での暮らしを考えることにもつながっています。
寒さの厳しい季節だからこそ、住まいの暖かさについて、少し考えてみませんか。
—
山梨・八ヶ岳で暮らす Vol.03
株式会社SHOEI
参考:気象庁の気象観測データ、環境創機株式会社「そよ風」製品情報